アンケートの自由記述(フリーコメント)は、選択式では拾えない「本音」が詰まっています。しかし数が多いと集計が難しく、読んで終わりになりがちです。本記事では、設問の作り方から、集計前の下準備、Excelでの集計、AIによる自動化まで、自由記述を実際に改善へ活かす手順を解説します。
自由記述に価値がある理由
選択式の設問は「用意した選択肢の範囲」しか分かりませんが、自由記述には想定外の要望や具体的なエピソードが含まれます。ここを分析できるかどうかで、改善の質が変わります。
特に価値が高いのは、選択肢を作った側が思いつかなかった論点が出てくる点です。満足度が下がっている原因が、実は用意した設問のどこにも無かった、ということは珍しくありません。
回答を得やすい設問の作り方
分析の質は、実は設問の書き方で半分決まります。空欄や「特になし」ばかりでは、どんな分析手法を使っても何も出てきません。
- 聞く範囲を絞る:「ご意見をお聞かせください」より「使いにくいと感じた点があれば教えてください」のほうが具体的な回答が集まります。
- 1問につき1つのことを聞く:「良かった点と改善点」を1つの欄で聞くと、どちらか片方しか書かれません。
- 選択式の直後に置く:「満足度3以下を選んだ方へ:気になった点は?」のように、直前の回答を受けて聞くと具体性が上がります。
- 必須にしすぎない:必須にすると「特になし」が増え、かえって分析対象が濁ります。
集計前の下準備
いきなり分類を始める前に、次を済ませておくと後の作業が大幅に楽になります。
- 1行1回答の表にする:回答IDと本文の列を作ります。属性(年代・利用歴など)があれば列に足しておくと、後でクロス集計ができます。
- 無効回答を分ける:「特になし」「なし」「-」などは、削除せず「無効」ラベルを付けて残します。削除すると母数が分からなくなり、割合を誤ります。
- 表記ゆれをそろえる:全角と半角、送り仮名の違いは、この時点でそろえておきます。
- 個人情報を除く:氏名・連絡先が書かれている場合は、分析用の表から外します。
分析の進め方(アフターコーディング)
自由記述を後からカテゴリに分類する作業はアフターコーディングと呼ばれます。手順はシンプルです。
- まず30〜50件そのまま読む:出てくる話題を書き出し、そこからカテゴリ(テーマ)を作ります。先に頭で考えたカテゴリは、たいてい実態と合いません。
- テーマで分類:各コメントが何について述べているか(価格、品質、対応、使いやすさ等)でタグ付けします。まず5〜7個から始めます。
- 感情を判定:ポジティブ/ネガティブ/中立を付けます。
- 集計する:テーマ×感情で件数を数え、多い不満・多い称賛を洗い出します。
1件のコメントに複数の話題が含まれることは普通にあります(「価格は満足だが手続きが面倒」など)。この場合は無理に1つへ押し込めず、テーマごとに分けて数えるのが正確です。
Excelで集計する
数百件までなら、表計算ソフトだけで十分に分析できます。
- A列に回答本文、B列に「テーマ」、C列に「感情」の列を作ります。
- B列・C列は入力規則(プルダウン)でラベルを固定します。手入力にすると表記がばらつき、集計できなくなります。
- ピボットテーブルで「行=テーマ/列=感情/値=件数」に集計します。
- 属性列がある場合は、フィルタに年代や利用歴を入れると、層ごとの違いが見えます。
この作業を一度やると、カテゴリ設計の良し悪しがすぐ分かります。判断に迷う件が多いなら、テーマの定義が曖昧だということです。
頻出語だけでは足りない理由
自由記述の分析というと、よく出てくる単語を数える方法(ワードクラウドなど)を思い浮かべるかもしれません。全体の雰囲気をつかむには手軽ですが、それだけでは打ち手になりません。
たとえば「価格」という語が100件に出てきたとしても、「価格が高い」のか「価格が安くて満足」なのかは、語を数えるだけでは分かりません。語ではなく、意味(テーマ+感情)で分類する必要があります。頻出語は最初の当たりを付ける道具として使い、判断はテーマ別の集計で行うのが実務的です。
大量の記述をAIで分類・集計する
数百〜数千件のコメントを人手で分類するのは現実的ではありません。AIを使えば、各コメントのテーマと感情を自動で判定し、集計まで一気に行えます。似た内容の使い回しやまとめ処理で、費用も抑えられます。テキスト分類の実務ガイドの考え方がそのまま応用でき、集計と可視化の詳しい手順は口コミ・レビューを分析する方法にまとめています。
自動化しても、カテゴリの設計と結果の解釈は人の仕事です。前述のとおり先に30〜50件を自分で読み、テーマを固めてから自動化すると、出てくる集計がそのまま打ち手につながります。
結果の活かし方
- ネガティブが多いテーマ=優先的な改善対象。件数が多いものから着手します。
- ポジティブが多いテーマ=広告・LPで訴求できる強み。回答者の言葉をそのまま使うと効果的です。
- 代表的なコメントを社内共有:集計表だけより、実際の声を数件添えるほうが現場の納得感が高まります。
- 次回のアンケートに反映:多かったテーマは、次回は選択式の設問にすると、経年で比較できるようになります。
よくある失敗
- 印象的な1件で方針を決める:強い言葉のコメントほど記憶に残りますが、必ず件数で確認します。
- 無効回答を削除してしまう:母数が変わり、割合を誤ります。ラベルを付けて残してください。
- カテゴリを毎回変える:定義を変えると前回と比較できません。変更した場合は変更日を記録します。
- 読んで終わりにする:分類・集計まで進めないと、担当者の主観の域を出ません。